【番外編】”生まれてくれてありがとう”。「君の椅子」プロジェクト
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【番外編】”生まれてくれてありがとう”。「君の椅子」プロジェクト

緑は生い茂り、広い空は濃い青色に。東川町にも夏がやってきました!
湿度が低いので、本州とはまた違う、吹き抜ける爽やかな暑さです。

今回は、Higashikawa Makers番外編第二弾。
新たな生命の誕生を祝う、「君の椅子」プロジェクトをご紹介します。

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「君の椅子」プロジェクトって?

現実がどうあれ、新しい生命は、日々産声を上げ、健気にひたむきに前を向いて歩み始めます。だとしたら私たち大人は、政治や社会に依拠するだけでなく、子どもたちの健やかな成長のために、たとえ小さくとも、今立っている場所で、自らのできることを少しずつ積み上げていくほかありません。
ー「東川町椅子Collection 1」磯田憲一さん


東川町で2006年から始まった、「君の椅子」プロジェクト。
毎年異なる建築家やデザイナーがデザインし、町の職人さんが作成した椅子を、町内で生まれた全ての子どもに贈っています。

このプロジェクトは、プロジェクトの代表である磯田憲一さんが担当されていた、旭川大学大学院地域政策ゼミでの語り合いから生まれました。

その全てを親や身近な大人たちにゆだねる、幼い子供たち。
ネグレクトや虐待を報じる痛ましいニュースは、後を絶ちません。

新たな生命の誕生は、誰にとっても、喜ばしいこと。
地域社会で喜びを共有し、助け合い、支え合う。
かつて生活の中に存在していたものを、もう一度取り戻したい。

小さな町役場に出生届を出しに来たお父さん、お母さんが、役場を出る時、小脇に小さな椅子を抱えている。それを見た町の人が、”あっ、赤ちゃん産まれたんだね、おめでとう”、そう声を掛け合う風景をつくっていきたい。

そんな彼らの提案に最初に応えたのが、ここ、東川町でした。
以来、16年に渡り、名前と誕生日が刻まれた「世界にひとつだけの君の椅子」が、子供たちのもとへと届けられています。

君の椅子

東川町が発行する東川椅子コレクションに、「君の椅子」プロジェクトの代表が掲載されている「君の椅子」ものがたり。その1巻〜6巻を読んで、頭に残った言葉やエピソードがいくつもありました。

椅子を受け取る子ども、その親や身近な大人、そして製作側に立つデザイナーさんと家具職人さん。この三者と君の椅子にまつわるストーリーをご紹介しようと思います。


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❶: 思い出を刻み、時を貯めていく装置

受け取った子どもにとって、「君の椅子」は、自分が生まれたことを喜び、ともに祝ってくれた人々がいたことの証。成長してもう座れなくなっても、椅子を見てそのことを思い出す。それがきっと、困難なときに、あなたの力になる。 そんなメッセージに、こんな言葉が添えられていました。

人生に悩み迷う時、持っている思い出の数が多いほど生きる力が強くなる。
ー作家 角田光代さん


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❷: 3.11に生まれた君へ

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1年後の誕生日を、笑顔で迎えられるように。
今こそ、「生まれてくれてありがとう」を伝えたい。

そんな思いから、震災当時、プロジェクトに参加していた東川町、剣淵町、愛別町と磯田代表は独自で3月11日に被災3県で生まれた子どもの数を調査し始めます。そして5ヶ月をかけて、98人の新しく誕生した赤ちゃんの名前を把握しました。

すごいのは、椅子を3県98人の家族全員に椅子を手渡ししたこと。
”希望の椅子”を受け取ったお母さんからは、こんな声が。

▶︎この子は一度もおめでとうと言ってもらえなかった子だけど、今日初めて”おめでとう”と言ってもらえた気がする。
▶︎3.11の子、震災の子と言われ続けていたけれど、「希望の子なんだよ」と言ってもらって、気が楽になった。


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❸: 作り手と使い手を結ぶ

ある日、製作を担当した工房の元に、「君の椅子」の修理の依頼がきました。職人さんは、椅子を持ってきてくれたことがとても嬉しかったそうです。大事にしてくれている、と感じたのではないでしょうか。

壊れたら、捨てて新しいものを買う。
そんな、大量消費・大量生産の時代の中で薄れつつある、作り手の存在。

「君の椅子」プロジェクトは、ものにもの以上の思いを重ね、作り手と使い手を繋ぐ取り組みでもあります。

そして、旭川家具の名産地である東川、その価値を地域の方へもっと伝えたい。手触り、座り心地、形の美しさ。「君の椅子」は、そういったものに触れるきっかけにもなると思います。

家具関係


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おわりに

目に見えない、だけど確かに存在するものを紐解く学問専攻の私にとって、すごく興味深いプロジェクトです。

願い、祝福、記憶など。時間の経過とともに少しずつ含みながら、そこに存在し続ける。皆さんにも、そんな大切な「もの」はありますか??

ps   Higashikawa Makersシリーズ#7は今月末に発信予定です!お楽しみに。

note編集担当:地域おこし協力隊 大内美優


【参照】
東川町 椅子 コレクション 1~6( amazon購入ページ



いつかこのまちに来てくださいね!
北海道最高峰の旭岳を有する人口約8300人の町、東川町。1985年に「写真の町」宣言、2014年には「写真文化首都」を宣言ました。写真文化の中心地として、「世界中の写真、人々、そして笑顔に溢れる町づくり」に取組んでいます。道唯一の、地下水を生活水として利用する町でもあります。