人の居場所をつくる家具:Higashikawa Makers #05 アール工房
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人の居場所をつくる家具:Higashikawa Makers #05 アール工房

Higashikawa Makers:
写真の町・北海道東川町で、思いを形にする方々のストーリーを発信する記事シリーズ。こちらで紹介する家具や食べ物、雑貨たちは、ひがしかわ株主制度(ふるさと納税)特設サイトに掲載をしております。


ユニーク

アール工房の家具は、とにかく「ユニーク」。ショールームの家具と木製雑貨を見て、触るたびに、「唯一」「他に存在しない」といった言葉が頭に浮かびます。10数名の職人を揃え、コンピュータ性能のある大型機械も積極的に取り入れながら、機械と人の融合を大事にしたモノづくりを続ける、アール工房。効率よく生産をしながら、地元の人に愛されるユニークな商品を生み出すその魅力とは!
全てのデザインを担う、代表の石川良一さんの豊かな感性を探りました。

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お客さんの要望に応えたい

東川の中心地から旭岳方面に10分ほど車を走らせて、坂道を上がる。周りは静かな雑木林に囲まれた落ち着いた場所に、アール工房はあります。
石川さんがこの場所に工場とショールームを構えて、20年以上になります。元々は家具のパーツ工場があった場所で、石川さんもその会社の経営に関わり続け、1997年に工場や機械の一部を引き継ぐ形でアール工房を立ち上げました。

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「出身は山形だから北海道には親戚も少ない。旭川の大学で建築を学んで設計事務所に勤めた時期もありました。でもね、100%納得できない図面をそのまま形にしていくのが自分には向いてないと思って。そんなとき、家具のパーツ工場に出会って、建物の設計よりもその中で人が使う家具の方に興味が湧いたのが家具作りを始めたきっかけでした」

興味を持ったことはとことん調べるタイプ。 “好きこそものの上手なれ”の精神でオリジナル家具作りのノウハウを身につけてきた石川さん。

「お客さんから、こういうものが欲しいと相談されて、それを突き詰めて考えて面白おかしく形にするのが僕の仕事。あとは、自分が生活していてあったら便利だと思うものを作っています。個人のお客さんのオンリーワン商品から、企業向けのデザイン請負もあります。100以上の大量生産もあったりと仕事の種類はいろいろですが、基本はオリジナル家具メインで地元の無垢材を多く使って作っています」

総製作アイテムは数えきれない程。オリジナル家具のデザインは石川さんが担います。アイデアが湧き出てくる背景には、物事への飽くなき探究心と、この仕事が好きと言う原動力にあるようです。

「朝は早いほうが仕事が捗るから、空が暗いうちから会社に来る。その時間に周りの自然を眺める余裕なんてないよ。自分が選んだ自然豊かな、この場所に根付いて、家族が食べていける仕事を楽しんでやることを大事にしています」

そう語る石川さんの横顔からは、前を向いてモノづくりを続けて来た力強さと、ポジティブな精神力を感じます。

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                             Aチェアー

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モノづくりのスタイル

アール工房の家具は、石川さんの図面を元に、工場の職人が一人でひとつの作品を担うという分業無しのスタイル。仕上げ塗装は自社の塗装職人が行います。

「うちの職人は皆、腕がいいですよ。その中には息子もいますが根性の強さは僕に似たんだね(笑)。一人の職人が最初から最後まで、ひとつのものに責任を持つのは作業効率は悪いけど、サイズや形が自由にできる。それぞれが違うものを作るから、現場ではいつもいろんな種類の家具が作れます。その横で僕がガタガタ文句をいいながら出来上がりのチェックをするんです」

家具設計では、大げさなコンセプトは持たないというのが面白いところ。

「若い頃はデザイン面を重視して提案した家具もあったけど、強度の面に無理がかかったりするから、最終的には使いやすいことが一番大事。それでいて、どこか面白い、他には無いデザインを心がけています」

使いやすさだけでなく、そこで過ごした時の気持ちまで、何通りも組み込まれて設計されている家具たち。メンテナンスも考慮されたソファは布の張替えが可能だったり、生地が撥水加工されているものが多いのです。
無垢材は長く使える丈夫な素材なので、通常に使っていて壊れるといった事例はほとんどありませんが、修理の相談もできるので購入後も安心です。

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暮らしのスタイルを変える、家族の居場所づくり

ショールームで商品説明を受けると、自分の暮らしにとって必要な家具が見えてきます。せっかくお金をかけるなら、こう言うものがあると便利だと、プロの視点でアドバイスをくれるところもすてき。

「僕は大体、人の家に行くと、何人家族?って聞くんです。4人で暮らしているっていう割におじいちゃん、おばあちゃんの姿が見えないことがあるでしょう。老々介護とかで、老人を寝室に押し込んでしまう暮らしのスタイルを家具で改善できないだろうか?と思って作ったソファが“ガブリエル”。茶の間にいる時間が長くなれば家族の顔を見ながらの会話も少しは増えるよね。そう思って老人用に作ったけど、今では身体を楽に伸ばしてくつろげるからと、老若男女問わずに人気です」

孤独にならないために、人の居場所を家具で作る。“ガブリエル”は畳1枚分の座面が特徴的な奥行きのあるソファーだ。長時間座っても、寝転がっても疲れないサイズで、希望者にはクッションの上に電気毛布を入れて納品する。

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思いつきのアイデアが生む家具

暮らしに溶け込む家具づくりの一方で、個性的な椅子作りにも力を注いでいるアール工房。

「椅子って楽しくて、ほとんどが思いつきで作ってるんです。」

思いつきとはいえ、体の作りや骨の動きを考えた細かな設計がなされています。小さい体型の人に合う椅子、パソコンをする人に向いている椅子、ルンバ対応の脚の椅子(気になります)、木をツボに押しながら座る自動マッサージ機能のある椅子、女性の骨盤を支えてくれる椅子、足をつけたらロッキングチェアーになる椅子、使わないときは重ねられる椅子、などなど様々!

ショールームの中に所狭しとアイデア商品の中でも特に仰天したのが、“隠し金庫”があるチェスト。動くとは思わない部分の棚が回り、その裏に宝物や現金がしまえるつくりになっているんです!わくわくしますね。

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                         〇▽▢デスクセット

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お手頃価格にするまでの工夫

いまや道内産の家具の6割は旭川近隣で作られており、東川町でも家具作りがしやすい環境が整っています。

「不足した材料や機械のメンテナンスなんかも、急いだらその日のうちに解決できるルートが近場に色々ある。こんなにモノづくりの材料が揃っているのは飛騨高山地区か旭川近郊くらいじゃないかな。そんな地域だから長く続けてこれたし、素材選びにも拘れます」

アール工房では、できる限り道産材を使いますが、色味が人気のブラックウォールナットは日本で手に入らないので海外のものを使うなど、適材適所で木材を選んでいます。材料の価格を抑えるために、節や、ひびの入った一枚板も使う分、仕上がりの美しさには職人の創意工夫が凝らされます。

「無垢材を使ったオリジナル家具でも、地元のお客さんや若い人が買いやすい価格にしたいと思っています。そのためには機械の“技術”と、人の手作業の“技能”を上手に使い分けて行く必要がありますね。例えば、うちのダイニングテーブルは6万円から設定しています。10万を超えると手が出しにくい人でも欲しいと思ってもらえたら嬉しいです」

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東川の魅力を木製品で伝える

ショールームへ訪れるのは、地元の人に加えて、外国人を含む観光客も年々増えているといいます。

「小さな町でこんなに観光客が多いのは行政の力が大きいですよね。人が集まってくるのは素晴らしいこと。同業者で協力して、家具を見て回れる企画が増えると、面白い文化がどんどん生まれるんじゃないかな。そうやって東川の魅力を自分たちは木製品で伝えて行きたいと思っています」

既成概念に捉われない、暮らしに寄り添う丁寧な技能。それを手に取りやすくするためのユニークなアイデアと、技術を駆使したモノづくりは東川の文化へと繋がっていきます。

「自分たちが楽しい気持ちで作るものが、お客さんにとって “使ってみていいもの”や“面白い”と感じてもらえるものになれば一番嬉しいですよ」

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note編集者的すてきポイント

わくわくを追いかける探求心と、それを形にする確かな技術力。かっこいい。家具が「人の居場所を作る」という言葉、動きを止めて見入ってしまいました。王様のような気品を漂わせるAチェアーは、〇▽▢のかわいらしいデスクセットは、誰の居場所になるんだろう。


28.アール工房

2009年に東川町に開業した、「東川町のおもしろ家具工房」として、ソファやテーブル、椅子、小物まで毎日の生活が楽しくなる”遊び心満載”なオーダーメイド家具を製作する家具メーカー。ショールームも有しており、代表の石川良一さんのアイデア溢れる家具を見ることができる。工房名は、「新芸術アールヌーボーをモジった」のだそう。小物商品以外はすべてオーダーメイドで、「こんなものが欲しい、改造してほしい」という要望にも対応可能。

住所: 北海道上川郡東川町東3号北21番地
電話: 0166-82-5338
公式Facebook:https://www.facebook.com/rkobo.higashikawa/


取材・構成・執筆:塚越 さち
note編集:大内 美優(地域おこし協力隊)




「写真の町」東川町をよろしくお願いします!
北海道最高峰の旭岳を有する人口約8300人の町、東川町。1985年に「写真の町」宣言、2014年には「写真文化首都」を宣言ました。写真文化の中心地として、「世界中の写真、人々、そして笑顔に溢れる町づくり」に取組んでいます。道唯一の、地下水を生活水として利用する町でもあります。