人と、木と、交差する家具づくり:Higashikawa Makers #06 woodwork
Higashikawa Makers:
写真の町・北海道東川町で、思いを形にする方々のストーリーを発信する記事シリーズ。こちらで紹介する家具や食べ物、雑貨たちは、ひがしかわ株主制度(ふるさと納税)特設サイトに掲載をしております。
woodwork
woodworkは1995年創業。岡村定男、立岡和弘、秋葉都志夫の3人の家具職人が、自然豊かな東川町で特注家具を専門に立ち上げたメーカーです。
モノづくりへの飽くなき探究心と愛情を持ち、技術を磨きつづけた結果、1000を超える特注家具を生み出し、多岐にわたる要望に対応してきました。
現在は“オリジナル家具”や“子どものための家具作り”にも力を注いでいます。
woodworkのモノづくりへ込めた思いについて2代目代表・岡村貴弘さんに聞きました。
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特注家具で勝負する
創業当時(1995年)全国的に日本家具の既製品が生産される中、「特注家具で勝負する!」という思いで立ち上げたwoodwork。
ひとつひとつの製品に、機械と人の技術を織り交ぜて生み出す特注家具の制作には、時間もコストも倍にかかります。それでも要望に丁寧に応えたい気持ちが、25年変わらぬモノづくり魂と職人を生み続けます。
作り手として現場での経験を重ね、創業からの想いを受け継いだ2015年、岡村さんはwoodworkの代表となりました。
「父親が40代後半まで勤めていた家具メーカーを辞めて、メンバーと一緒に特注家具の会社を作ると聞いた時は、男3人が生涯をかける情熱は凄い事だと思いました。私が入社したのは創業から3年目の1998年です。その頃は大手家具メーカーが経営不振に陥るなど、家具業界も大変な時代でした。“親の経営する会社だから”将来的に社長になれるほど甘い世界では無く、一職人として認められるまでには最低でも10年はかかりました」
「現場での経験の中で、ひとつの家具にとことん向き合うモノづくりが好きになりました。できるだけ多くの要望に応えたいという気持ちが日々生まれますね。悪く言えば飽き性なので、既製品で同じ形だけを作るメーカーじゃないから続けてこれたと思います」
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人との交わりから生まれる家具
創業メンバーの一人は建具職人だったこともあり、木製扉や窓の木枠の製作も得意。自分たちで作った、カフェのような落ち着いた雰囲気のショールームは随所にwoodworkの手仕事がちりばめられています。その中でも存在感を放つテーブルは、家具デザイナー山田佳一朗氏との出会いで生まれた、無垢材を贅沢に使用した「SORIDOME」シリーズ。
無垢の木は、多かれ少なかれ必ず反る。その上で反りを最小限に食い止めるために“反り止め”という伝統工法を用います。従来の発想では、裏側に隠すこの工法を、あえて見える場所に配置しようという家具デザイナーの斬新な視点を取り入れました。
「あるイベントで山田さんと出会いました。何度かお会いする中で、お互いの熱量が引きあって一緒にオリジナル家具を作ってみたいと思うようになりました。山田さんから、“デザインはただかっこいいだけじゃ意味がない。機能と一体化してこそ、意味が生まれる。”と教わりました」
「僕らも伝統的な日本の技術や、工法を盛り込むように意見を伝えました。試行錯誤しながら仕上がったテーブルは、無駄の無い機能的なデザインで、色んな形の椅子に合わせやすいと今では全国的に人気を得ています」
woodworkのモノづくりは人との交わりの中でより完成されていく。
考え方や技術を融合しながら、自分たちのスタイルを生みだしています。
それは家具デザイナーに限らず、例えば、東川町在住の若手写真家(和田北斗氏)の作品を展示しながら見せるフォトフレームなども!ショールームにいるだけで、時代とリンクした人々のエネルギーを感じとれるのも面白いのです。
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材料の持つ表情
家具を買うタイミングは実に様々ですが、生活環境の変化と共に見直す人は多いのではないでしょうか。その一つに、結婚や子供の誕生があります。
「ショールームへやってくる年代は30〜40代のファミリー層が7割を占めているんです。うちでは特注家具を手がけながら、デザインと機能性、ベースとなる形が決まっているオリジナル家具の製造にも力を注いでいます。お客様の住居環境に合わせて、ご提案をさせていただきます」
また、woodworkでは、オリジナル家具の低価格高品質を実現しています。
その背景には、材料へのこだわりがありました。
「20年前の日本では、見た目が綺麗なものしか売れないという理由で、節や白太(木材の樹皮に近い周辺部で、中心部よりも材質評価が劣る)が入っている木材を避けてきました。でも、節を入れることで木の個性が見えるんです。ひとつとして同じ木目はないですから、生き生きとした製品が作れます。結果的に、家具として使える材料が増えて、木の生命を大切にすることに繋がっています」
節のある材を職人が目利きしながら木目を美しく組み合わせて、サイズ変更可能なオリジナル製品「OTTI MANIA」が生まれました。お客様の元へ届く完成品は、オリジナル家具でありながら表情はどれも一点物。
その人の暮らしと共に、何十年も個性豊かに生きる家具となります。
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子供のための家具
創造の種は日々の暮らしや、人との対話の中に散りばめられているといいます。新たな価値観が新しい製品を生む。その立場になって気づきがあるように、“子供のための家具”は、子育て世代の意見を多く取り入れています。
建築デザイナーからの試作を頼まれたことがきっかけで、制作に関わったことから始まったrabi kids chair(ラビキッズチェア)は、うさぎの横顔のようなシルエットがかわいく、見た目は北欧やヨーロッパを感じさせるテイストでありながら、海外製品には無い座りやすさと軽量化を実現しました。
「本当は別のメーカーが製造する予定だった“rabi kids chair”ですが、試作で作った形が道外の工場では技術的に作れないとクライアントから相談をうけたんです。最終的にwoodworkで作らせてもらうことになりました。製品化するとなると、自分の子供が試作品を何年も使ってきたので、実用性を兼ね備えた形で設計し直し、色々なアイデアと意見を重ねて今の形になりました」
椅子から始まり、現在では勉強机とランドセルラックを展開する“子どものための家具”シリーズは子供自身が片付けを「好き」になるようにと、ネーミングを「SUKiii(スキ)」としました。
ふたりのお子様を持つ岡村さんが何時間でも語れるほど愛情を込めて作った製品は、細かな機能面に工夫を凝らしています。
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木育
次世代の子供たちへ、本物の木製品を使ってもらいたいという想いから、近年は「木育」への情熱にも力を注ぐwoodwork。「木育」は、2004年に北海道で生まれた言葉。その内容は幼少期から生涯にわたって、木と触れ合おうという動きで、“単に木の理解を深めるだけでなく、鋭い感性や自然への親しみ、環境問題に対する確かな理解の基礎を育むもの”としています。
「当社では端材を利用して、素材の違う木に触れながら“遊び感覚”でモノづくりを楽しんでもらう“ワークショップ”を定期的に行っています。きっかけは東川町の企画で声をかけてもらった事にもあります。自然豊かなこの場所だから、木育を伝えやすい環境もあるんじゃないでしょうか。時計づくりのワークショップでは、幅広い年齢層の参加者が見事に違う作品を作りあげていて、見ているこちらも楽しかったです。木のぬくもりを参加者に伝えることはこれからも続けて行きたい活動です」
岡村さんは、特注家具を作りながら、モノづくりの奥深さと楽しさを追求し続けています。子供時代は絵を書いたり、美術での工作が好きだったそうで、その頃の豊かな気持ちはしっかりと今に繋がっているのではないでしょうか。
岡村さんが持つのは、職場の仲間、出会う人々、woodworkに関わる皆(お客様を含めて)でモノづくりをしているという感覚。その思いの先には、世代を超えて受け継いでいく、人と共に生きる家具があります。
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note編集者的すてきポイント
SORIDOME=反り止めということを知った今回。意味がこもった、かつ口ずさみやすい名前の数々からモノづくり、そして使い手への思いを感じます。同シリーズのピアスも素敵なんです!ぜひ、ホームページをふらっと訪ねてみてください。
1975年開業。開業当初からオーダー家具を中心に扱う家具メーカーだが、現在はオリジナル家具も多数販売している。家具という分野のみならず、木で製作できるものはなんでもチャレンジするという想いで、「WOODWORK=木製品、木工細工」と命名。機能と意匠を兼ねた無駄のないシンプルなデザインが特徴。可能な限り無垢材を使いながら、木の特徴を最大限まで活かし、適材適所で合板を使うなど、長く使える家具作りを目指している。
住所: 北海道上川郡東川町北町7丁目11-16
電話: 0166-82-3920
公式HP:http://woodwork-h.jp/
取材・構成・執筆:塚越 さち
note編集:大内 美優(地域おこし協力隊)