火事に遭っても、失わなかった2つのもの:Higashikawa Makers #02 樹の郷AKO
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火事に遭っても、失わなかった2つのもの:Higashikawa Makers #02 樹の郷AKO

Higashikawa Makers:
写真の町・北海道東川町で、思いを形にする方々のストーリーを発信する記事シリーズ。こちらで紹介する家具や食べ物、雑貨たちは、ひがしかわ株主制度(ふるさと納税)特設サイトに掲載をしております。


作り続ける”翁”

樹の郷AKO(エコ)の代表・安東忠吉さんは、1941年に、北海道美瑛町に生まれました。中学校を卒業後、建具屋をしていた叔父の店で丁稚奉公を始めたことがきっかけとなり、以来64年間、一筋に職人の道を歩み続けています。

3年前、76歳の時に工場が火事に遭い、全てを失ってもその歩みは止まりませんでした。その源は、作り続けることへの情熱。
その一方で、「木工は健康維持とボケ防止のため」、「仕事は15時まで。帰って水戸黄門を見る」など、現役から一歩退いた翁の姿も見せる安東さん。東川らしい小商いの源流がここにあります。

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安東、小山、岡沢

建具屋での丁稚奉公を終えてからは、道内のいくつかの工房で経験を積み、1970年代初頭に上川木工に入社しました。上川木工といえば当時は業界屈指のメーカーで、多くの社員を抱え、作業は分業体制。安東さんは30才頃から塗装を担当していたといいます。この時得た塗装の経験は、今も活かされています。エコの生産作業は木取りから塗装・仕上げまでほぼ全てを外注に頼らず自社で行っているのです。

上川木工で同僚だった小山さん、岡沢さんと共に独立して工房を立ち上げた。社名の「AKO」は3名の頭文字をとったもので、普通は「アコ」と読むところを、環境配慮の意味を込めて「エコ」とした。代表はジャンケンで決めたという(なんだか和みますね)。トレンドマークのバンダナをつけ始めたのもこの頃で、「がんばろう」と自分を鼓舞するためでした。

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真似されても業界に貢献できたと思えばいい

“最近、白樺を材料として使う動きが出てきているけれど、ウチでは10年以上前から使っています。このテーブルも10ヶ月以上試行錯誤をして商品化したもの。天板の裏に溝を入れることで反りにくいようにしています。家具の製法に特許はないので、真似されても仕方ないよね。その分、家具業界に貢献できたと思えばいいじゃないですか。

おおらかに言い放つ安東さんですが、そもそも容易に真似できそうにはありません!!

樹種の異なる材を組み合わせたデザインも、安東さんが作る商品の特徴の一つ。職人によっては性質の異なる木を組み合わせるのは邪道という人もいるらしいのです。曲がりや歪みの原因になるから、という理由で。しかし、「クレームになるような製品は作らないこと」を信念とする安東さんが、長く使えないようなものを世に出すはずはありません。

立ち上がりやすい「スツール」01

                    立ち上がりやすい「スツール」

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お客さんとの距離は近いほうがいい

エコは基本的にオーダーメイド家具の製作がメインで、既製品についてはショールームでの直販と、個人的につながりのある小売店でしか買うことができません。

“問屋さんから取り扱いの誘いもあったけれど、断ってきました。間に人が入ってしまうとクレームの原因にもなるし、何よりお客さんとの距離が離れてしまう。ショールームでお話をしながら、商品を実際に手にとって確かめてもらってから決めてもらうのが一番。”

ショールームに並べられた無垢材を使ったテーブル。小さいサイズのものなら10万円と、かなりお求めやすい価格設定。「価格には自信があるから値下げはしません」と安東さんが言い切るだけあって、これは値下げ交渉する気にはならなそう。そもそも、1円でも安く買おうという人はここには来ないのではないでしょうか。

安東さんの人柄とエコの温もりを求めて人が集まり、適性な価格設定がされた品を納得して買っていく。そこには売り込みも営業もない。上代も下代も、値段交渉もない。入り込む余地がないのです。

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恩送り

こうすればもっと売れて、利益が出る。その方法がわかっていても、やらない。好きな木工を続けてお客さんに喜んでもらいたい。その一念で続けてきました。「作品をほめてもらうと嬉しいんだよねえ」と話す表情は本当に嬉しそうで、輝かしいです。

実は、安東さんは旭川市在住。東川で仕事をつづけるのは、町にお世話になったからだといいます。

「独立して工房を構えた時も、3年前の火事の時も、役場の人には本当にお世話になりました。これまでいろいろな人に助けてもらって生きてきた。東川にいるのはその恩返し。」

受けた恩への感謝を込めて作られ続ける家具。町への恩返しであると同時に、お客さんへの恩送りのようにも感じます。そのように善意がつながって今の町があり、未来の町へとつながる。

エコの商売を支えてきたのは、安東さんの技術と、人のつながり。火事でもこの2つが失われなかったから、再起することができたのかもしれません。利益を追求する方針だったら、あの時に終えていたのではないか、とふと思ったのでした。

立ち上がりやすい「スツール」04

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本気でやる人がいたら応援したい

“最近仕事が本当に楽しくなって、商売としてはなかなか厳しいけれど、お客さんが新しい人を紹介してくれたり、助けられています。体が元気なうちは続けていきたい。オレにできるんだから、本気で取り組めば誰でも仕事は覚えられると思います。そういう人がいたらぜひ応援したいです。工場の裏には池があって、東川町の町木の桂が自生しています。観光資源として活用したり、やれることがまだ色々あると思う。”

エコのショールームに並べられているのは、自社の製品だけではなく、別の工房の製品や個人の作家の作品も並び、ちょっとしたセレクトショップのよう。この地に安東さんのプロデュース力を活かした木工テーマパークができる日も、近いかもしれません。

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note編集者的すてきポイント

仕事は15時まで、帰ったら水戸黄門。代表決めはじゃんけんで。真似されたって、仕方ない。こういったエピソードの端々にあたたかさとおおらかさを感じつつも、信念を貫き、誰かのために作り続ける安東さんのファンになってしまいそうです。凛としたあたたかさ、素敵だなあ。


02.樹の郷AKO

樹の郷AKO
2004年に東川町にて開業した、「本物」志向の小さな工房。創立当初の3名の頭文字がA・K・Oだったこと、エコロジーの時代であることから、この工房名に。木材の中でも、白樺を中心に数種の自然色を活かしたデザイン性のある家具を、リーズナブルな価格で提供している。材料の無駄ながないよう辺材も活用しながら、道産木材の無垢材をメインにオーダー家具も受注する。仕上げも自然の植物油などを活用した無公害塗料を使用するなどの工夫も。

住所: 北海道上川郡東川町東3号北22番地
電話: 0166-82-0888
公式HP:https://orderakofurniture.wixsite.com/ako2017


取材・構成・執筆:初瀬川 晃
note編集:大内 美優(地域おこし協力隊)

ありがとうございます!
北海道最高峰の旭岳を有する人口約8300人の町、東川町。1985年に「写真の町」宣言、2014年には「写真文化首都」を宣言ました。写真文化の中心地として、「世界中の写真、人々、そして笑顔に溢れる町づくり」に取組んでいます。道唯一の、地下水を生活水として利用する町でもあります。